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睡眠薬や抗不安薬で認知症になるのか?

更新日:2020年6月9日


以前に、ベンゾジアゼピン類と呼ばれる最も良く使用される種類の睡眠薬や抗不安薬で、認知症のリスクが上がるのではないかという内容の研究についてご紹介しました。


今回は、その反対の内容といえるかもしれない研究についてご紹介します。


感情障害の患者におけるベンゾジアゼピン、Z薬、その他の抗不安薬と認知症との関連

※“Z薬”とはベンゾジアゼピンに類似した薬剤(ゾピクロン、ゾルピデムなど)がZから始まることから呼称されるようになったグループ名です。


この研究で最も特徴的なのは、対象を感情障害の患者に限定していることです。


今までの研究で、睡眠薬⇒認知症の結果となっていたのは、一緒に存在するうつや不安の影響かもしれないという見地に立っています。


実際にうつや不安が認知症のリスクになることは、多くの研究で証拠が示されており、感情障害の影響は大きい(あるいは短期的には認知症の前駆症状)とみる認識が広まりつつあります。


このような、うつ⇒認知症の影響を除き、睡眠薬の影響を確認するには、うつ病の患者どうしで比べることが必要であるということが、この研究のデザイン(感情障害の中だけで睡眠薬の影響を調べること)をもたらしています。


デンマークにおける研究で、20歳以上のうつ病を含む感情障害に罹患した235,465人が調査の対象となりました。


平均6.1年追跡され、9776人(4.2%)が認知症と診断されましたが、結果として以下の内容が示されました。

①ベンゾジアゼピンやZ薬の使用や使用量と認知症の発症(診断)との間には関連を認めませんでした。

②ベンゾジアゼピンやZ薬の使用量が最も多いグループでは認知症の発症(診断)は低くなっていました。(オッズ比:0.83)


つまり、(うつ等の感情障害の影響を除いた)睡眠薬や抗不安の認知能力への影響はなく、認知症の発症とは関係がない、ということになります。


また、②の解釈は推測にすぎませんが、薬剤を使用することによって、感情障害や睡眠障害の影響が軽減したことによるのではないかという議論がなされています。


この研究をもって、睡眠薬⇒認知症の因果関係が全く否定されるということではないと思われますが、少なくともうつや不安の影響を考慮する必要性が高いことが分かりました。


#認知症 #睡眠薬



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