重篤な身体疾患の診断と自殺企図の関連については指摘がありますが、今回は理由を問わずICUでの治療歴がある場合に自殺のリスクへどのような影響があるのか調べた研究をご紹介します。
重篤な疾患を経験した成人における自殺と自傷
イギリスにおける研究で、理由を問わずICUの入院を経験した423,060人(平均61.7歳、39%が女性)が研究の対象となりました。
ICUの入院と一般病棟に入院した場合を比較した結果として、以下の内容が示されました。
①ICU入院後には自殺や自傷が増加しており、ICU vs non-ICUで比較して、100,000人年あたり自殺41.0 vs 16.8、自傷327.9 vs 177.3 となっていました。
②ICU入院後のリスクは自殺で1.22倍、自傷で1.15倍となっており、これらのリスクは過去の精神疾患と関連していました。
つまり、“ICUに入院するような重い病気を経験すると一般的に自殺や自傷の危険性が高くなり、これに精神疾患の既往が関わると拍車がかかる”と言えそうです。
生命を脅かすような重篤な疾患を経験した後には、身体面はもちろんですが、自殺や自傷に至るような精神面での不安定さにも注意が必要であると考えられました。