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鼻腔内へのオキシトシン投与は有効性を証明できなかった


脳の視床下部から下垂体へ投射している細胞から分泌されるオキシトシンは、子宮収縮を促進するホルモンとして知られており、日本では注射剤が分娩誘発に対して適用認可されています。


しかし、以前から鼻腔スプレーの適応外での使用が、自閉症スペクトラム障害の社会性低下やコミュニケーション障害に対して広がりつつあり、実際の効果はどれほどなのか証拠が求められてきました。


今回は、NEJMに掲載されたオキシトシン鼻腔スプレーの効果を、児童から思春期で調べた研究をご紹介します。


鼻腔内オキシトシンの児童や思春期における自閉症スペクトラム障害に対する効果


3~17歳の自閉症スペクトラム障害のある子ども290人がこの試験に登録されました。


146人が鼻腔オキシトシンを投与するグループ、144人を偽薬を投与するグループとして、24週間の経過を社会性や自閉の程度の尺度(Aberrant Behavior Checklist modified Social Withdrawal subscale: ABC-mSW 0~39点で得点が高いほうが社会的交流が少ない)で調べました。


結果として、以下の内容が分かりました。

①2つのグループで ABC-mSWで測定した社会性の変化は明らかではありませんでした。(オキシトシンのグループで-3.7点、偽薬のグループで-3.5点)

②その他の社会性の尺度や知能尺度の変化も明らかではありませんでした。

③オキシトシンによる重い副作用は認めませんでした。


つまり、“オキシトシン鼻腔内投与を半年投与しても、社会的交流の増加などの明らかな改善を認めなかった”と言えそうです。


血中へのオキシトシンの移行がどの程度なのか、自閉症スペクトラム障害の中でもオキシトシン低下が見られる対象に絞る計画が可能か等、今後の検証が必要な結果であると思われました。

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