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トキソプラズマ感染と認知能力低下との関連

執筆者の写真: もりさわメンタルクリニックもりさわメンタルクリニック

トキソプラズマ(ネコが終宿主)は体長10マイクロ(1マイクロは1×10-6 m)未満の寄生虫で、妊娠初期に初感染した場合に胎児に障害を及ぼすので、その感染が警戒されます。


トキソプラズマ感染症は時に(免疫不全者では)精神症状を起こすことがありますが、一部でその感染が長期的に認知能力への影響を及ぼすのではないかと指摘されています。



健常者におけるトキソプラズマ抗体陽性と認知機能との関連


多くの研究の結果をまとめてより信頼性の高い結果を得ようとしたまとめの研究(システマティック・レビューとメタアナリシス)で、証拠としての質が高そうな13の論文(13,289人の参加者を含む)が分析の対象として選ばれました。


認知の広い範囲の項目について、今までにトキソプラズマ感染症になったことはある(トキソプラズマ抗体陽性者)がそれ以外の点では健康な人と、トキソプラズマに感染したことがない人を様々な認知領域で比べました。


結果として、トキソプラズマに感染したことがある場合には認知機能の4つの領域(処理速度、ワーキングメモリ、短期の言語的記憶、遂行機能)で、わずかですが明らかな低下を認めました。


つまり、“過去にトキソプラズマ感染症になったことがある場合には、症状の自覚がなくても、少しだけ認知機能が低下していることが多い”と言えそうです。


個人レベルではわずかな低下かもしれませんが、感染率の高い疾患なので、大きな地域の単位で考えた時には影響は大きいのかもしれません。

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