統合失調症の症状(幻覚・妄想を含む“陽性症状”や無為自閉・感情鈍麻を含む“陰性症状”)に対して、抗精神病薬の投与が行われます。
しかし、抗精神病薬は症状を軽減するためには有効であっても、QT延長と言われる心臓の伝導障害や突然死のリスクを上昇させる等、生命予後に対してはマイナスの要素となるのではないかと指摘されてきました。
今回は、抗精神病薬が与えると言われてきた生命予後に対する悪影響は本当か、大規模な研究で確かめた内容をご紹介します。
抗精神病薬による治療に関する身体的合併症と死亡率、20年間の追跡調査
フィンランドにおける研究で、統合失調症に罹患している62,250人について20年間の追跡調査を行いました。
結果として以下のことが示されました。
①抗精神病薬を使っても、全ての身体疾患による入院も、心臓疾患による入院も増えていませんでした。
②抗精神病薬を服用していた場合、全ての原因による死亡率は0.48倍と減少していました(心臓疾患由来は0.62倍、自殺によるものは0.52倍)。
③抗精神病薬の種類の中ではクロザピンが最も死亡率が低く、0.39倍となっていました。
④20年間の累積死亡率は、抗精神病薬の服用なしで46.2%、抗精神病薬全体では25.7%、クロザピンでは15.6%でした。
つまり、抗精神病薬の投与はイメージとは異なり、長期的予後において合併症を増加させず、生命予後はむしろ改善させる効果があると示されました。
これで、抗精神病薬は安全であるということにはならないと思われますが、少なくとも長期的視点に立った時には、総合的に見て、患者さんにとって身体(生命)的にも有益である可能性があると言えます。
#統合失調症
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