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執筆者の写真もりさわメンタルクリニック

抗精神病薬を開始して糖尿病を発症するリスクについて


統合失調症の症状軽減や気分安定のために使用される薬の中に、オランザピンやクエチアピン等、糖尿病があると使用できない薬剤があります。


今回は、かなり以前の研究(2004)になりますが、最初は糖尿病がない場合で抗精神病薬を開始して糖尿病が発症する割合を調べた研究をご紹介します。


非定型抗精神病薬の投与に関連する糖尿病の発症


非定型抗精神病薬(比較的新しいタイプの抗精神病薬、標準的に使用されている)を安定して処方されていた統合失調症の患者56,849人が研究の対象となりました。


上記の対象者のうち約2年間の経過で、糖尿病を発症したのは4,132人(7.3%)で、それぞれの薬剤について糖尿病発症の割合を比較しました。


結果として以下の内容が示されました。

①従来の抗精神病薬を使用した場合の糖尿病発症の割合を1として、他の薬剤の数値を示すとクロザピン1.57、オランザピン1.15、クエチアピン1.20、リスペリドン1.01となっていました。

②服用していた薬が影響していると考えられる糖尿病発症リスクはわずかでした。(寄与危険度attributable riskと呼ばれるリスクに寄与した割合はリスペリドン0.05%、オランザピン2.03%)


つまり、“ある種の抗精神病薬が糖尿病発症に関与する可能性は否定できないが、その投与が影響する部分はわずかである”と言えそうです。


しかし、血糖上昇に関連する症状として、ケトアシドーシス(体液の性質変化)による昏睡等、発生率は低くても重篤なものもあり、特に体格の変化が大きい場合などは血糖への配慮が重要であると思われました。

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