昨日お伝えしたのは、結核に対する抗生剤のD-シクロセリン(脳内のNMDA受容体に対する部分作動薬)が、不安を症状の中心とする精神疾患(不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害)に対して、暴露療法の効果を高める効果があるかもしれないという内容でした。
しかし、服用のタイミングによっても効果が違うのではないかという点があり、服用の仕方には疑問が残りました。
今日は、前回(2017年の論文)よりも新しく(2020年)、社交不安障害に焦点を絞った研究についてご紹介します。
社交不安障害に対する暴露療法増強のためのD-シクロセリン投与のタイミング
社交不安障害の診断を受けている152人(平均年齢29.24歳、84人が男性)が調査の対象となりました。
結果として、①暴露療法を行う前に投与するグループ、②後に投与するグループ、③偽薬のグループで効果を比較したところ、抗生剤を投与した場合には③偽薬よりも高い効果を認めましたが、曝露療法前後の服用タイミングでの差(①と②の差)は認められませんでした。
昨日紹介した研究(広範囲の疾患が含まれる、複数の研究を統合した研究)では服用タイミングで効果の出方に差があるかもしれないという内容でしたが、焦点を絞って服用タイミングによる違いをはっきりさせるために計画された今回の研究では、差は生じないという結果でした。
対象となる疾患や用量による効果の違いなど、さらに研究による確認は必要と思われますが、D-シクロセリンには何らかの行動療法を促進する効果がありそうです。
#社交不安障害
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