環境要因として、都会生活と精神疾患との関連が指摘されて来ました。
しかし、今回は元々、精神疾患の背景を持つ人では人口の密集した地域を住居として選ぶ傾向があるのではないかという疑問について調べた研究をご紹介します。
精神障害の遺伝的リスクと都会生活を好む傾向との関連
イギリスの大規模な調査資料(UK Biobank)を用いた研究で、385,793人(54%が女性、平均56.7歳)が対象となりました。
精神障害に関する多遺伝子リスクスコア(多くの遺伝的特徴から、ある病気への罹患しやすさを表したスコア)と住居のある地域の生活環境(人口密度等)の関連を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
①精神疾患の多遺伝子リスクスコアは都会生活(人口密集地域)の生活を好む傾向と明らかに関連があった。(例として45~55歳の統合失調症のハイリスクでは平均との比較で+88人/Km2)
②逆にADHDのハイリスクでは人口の密集を避ける傾向があった。(平均との比較で-31/Km2)
③これらの傾向は他の遺伝的分析法(メンデルランダム化、ゲノムワイド関連解析等)を行っても一貫していた。
つまり、“都会生活が単独で精神疾患を引き起こしているのではなく、そもそも精神疾患の人は都会生活を好むという重複する要素が絡んでいる”と言えそうです。
関連する要素を見出したときには他の絡んでいる要因について冷静に分析することが重要であると思われました。
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