脳の血管障害に伴った感情失禁に対する薬物療法


脳梗塞や脳内出血等の血管障害によるイベント後に著しい感情の不安定さが生じることがあり、“感情失禁”と呼ばれます。


仕組みとしては縫線核と言われる部位から脳半球へのセロトニン作動性の繊維が障害されることが指摘されており、セロトニンを増加させる抗うつ薬(SSRI)の投与が有効であると言われています。


今回は、脳内出血後に出現した長期に渡る感情失禁に対して抗不安薬のタンドスピロンが有効であった症例についてご紹介します。


Effect of Tandospirone, a Partial Agonist of the 5-HT1A Receptor, in a Patient With Chronic Poststroke Emotional Incontinence With Anxiousness

慢性的な脳卒中後の不安を伴う感情失禁に対する(5ーHT1A受容体の部分的作動薬である)タンドスピロンの効果


現在70歳の男性。62歳のときに脳内出血を起こし、右片麻痺となりました。発作から4ヶ月後、著しい不安を伴う感情失禁を認めるようになり、セルトラリン(抗うつ薬SSRIの一種)100mgにより治療したところ、間もなく症状は消退しました。しかし、薬剤を中止に伴い症状が再燃したため、同じSSRIのエスシタロプラムで治療を再開し、症状は治まりました。その後、6年間はこの薬剤を継続しています。

しかし、このエスシタロプラムを続けているにも関わらず、強い感情失禁を認めるようになり、攻撃性の亢進も認められ、家族を攻撃するようになりました。クリニックでバルプロ酸への変更が行われても改善せず、入院となりました。入院後は、抗不安薬(ロラゼパム)の追加も試みられましたが、症状は継続し、タンドスピロン60mg/日への変更が行われました。この変更後数日で、症状は全て消退し、自宅への退院となりました。


タンドスピロンは、抗不安薬の中では特徴的なセロトニン受容体の部分的作動薬としての性質を持っており、この症例のようにSSRIが無効になっている場合でも、まだ残存しているセロトニン受容体への効果を発揮したのではないかと考察されています。


不安が強く、感情の変動が著しい例で、SSRI、抗不安薬、抗てんかん薬が無効であった場合にも有効な方法として、タンドスピロンの投与を検討する価値があると思われました。


#薬物療法 #抗不安薬


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