
様々な外的因子から脳を守るためのしくみとして血液と脳の間には障壁(大きな物質を通さないしくみ)が存在し、これは“血液脳関門”と呼ばれます。
しかし、脳に治療のための大きな物質(抗体など)を届けるためには、これが障害になることがあり、このしくみをどのように突破するのか(影響を軽減するのか)が神経疾患の治療における一つの課題となってきました。
今回は、この治療的課題を乗り越えるために局所に集中した超音波を用いた結果(血液脳関門の開放と副作用の様子)を調べた研究をご紹介します。
アルツハイマー病における磁気共鳴のガイド下超音波による血液脳関門の開放
軽度から中等度のアルツハイマー病(認知症の尺度テストMMSEで平均22.8/30点)である5人(平均66.2歳)が研究の対象となりました。
MRIと共通の方法を用いたガイド(ちゃんとその場所が狙えているか調べるしくみ)で超音波を用い、その場所の血液脳関門の開放を確認し、その後の症状の変化で悪いことがないかを調べました。
結果として以下のことが分かりました。
①今回は前頭葉の白質を目標としましたが、その部分に超音波を用いたときに血液脳関門の開放が画像的に確認できました。
②その後、2ヶ月に渡って経過を観察しましたが、認知機能や日常的な遂行機能(どんなことができるのか)に大きな変化はありませんでした。
つまり、“超音波による方法で部分的に血液脳関門を開放することができ、副作用はなさそうだ”ということになります。
今回、用いられた血液脳関門の障壁を軽減できる方法で、治療に有効な物質が脳に届けられるようになることが期待されました。
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