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「構造化」の力


「構造化」は様々な領域で使われるキーワードですが、心理療法上は面接の構成要素(時間、場所、人、テーマなど)を流動的にせず、はっきりとした構造をもたせるときに使われます。

問題集の話に戻りますが、前回ご紹介した『物理基礎問題集』は実に明解な構造を持っており、公式の提示→NOTE(公式の簡潔な解説)→例題→練習という単純な構造の繰り返しからできています。一つ一つの区画がはっきりとしており、陳述も回りくどさや重複がなく、進めていく中で知識の輪郭がくっきりとするような整然さを持っているのです。

このように明確な構造の中で、学習者は単元の中での位置づけや目標が掴みやすくなり、分かり易い解説との相乗効果でモチベーションの維持がし易くなるのではないかと思われます。当時は、なんとなく「理解し易い問題集だなあ」、「今回は続けられるなあ」という実感を持っていたのですが、その背景にはこのような高いレベルの「構造化」の力が働いていたような気がするのです。

心理面接の様式を評価するときの一つの指標として、その面接がどの程度「構造化」されているのかという点があります。そして、状況に流され易い私は、この「構造化」が非常に苦手です。今回、大切な本として『物理基礎問題集』のことを思い出した時、その内部を貫いている構造化への意志と、受験生への配慮を感じたのですが、それと同時に、現在の自分の技術的な部分の未熟さとして、「構造化」不足という点に思いが至りました。

もちろん、流動性をもって良しとする面接スタイルもあるでしょうし、それで成果があがる場合も考えられます。

しかし、今回ご紹介した「構造化」の利点を思うと、しっかりとした構造があってこそ、相談される方がその構造の中で安心し、自分を思いを口にできたり、こちらのメッセージがはっきりと伝わることがあるのではないかと考えます。

クリニックの外来で常に構造化レベルの高い面接を行うことも困難だとは思います。しかし、私が「構造化の力」で学習上の徒労から救われたように、相談される方が「構造」から受ける良い影響を考えると、少なくとも「構造化」と対極的な「混沌」だけは避けたいと思うのです。


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