この本は精神科医療に携わる援助者にとって本当に「役に立つ」本です。
でも、誰の役に立つのかを少しだけ限定しなければなりません。それは言ってみれば……もがく人、だと思います。
あんまり悩まずに援助に携わることができる人は、自分の信じる道をガンガン突き進んで行けるのかも知れません。それで、援助を受ける患者さんを傷つけずに済み、なおかつ目的の達成が単なる援助者の自己満足ではないか評価できるだけの客観性を担保できるのであれば、こういった種類の本はいらないのかも知れません。
でも、一歩進むごとに、いやそれ以前に、「進むってナニ?」とか自問自答しながら、ずっと同じ地点で穴を掘って悩んでいる人。そんなに苦しいのに援助者という仕事をいろんな理由で続けざるを得ない人にとっては、本当に「役に立つ」本なのです。
試しに目次を抜粋してみます。
「超正攻法」でも「舌先三寸」でもない立場/ 手の内をさらし本気で頼む/ 「病感」へのアプローチがポイント/ ダメでも事態は急転する/ 困難は多い方が良い、なぜか/ ウソやごまかしはなぜ大切なのか/ 「本質に触れない会話」を続けていける存在になりたい/「動く」ケースと「待つ」ケース/待つには度胸がいる/精神科では、すべてが丸く収まるわけがない…………
どうでしょう? なんか心の痛いところに触れられる感じがしないでしょうか?
中身を実際に読んでもらえば、きっと、先輩や上司に、こんなふうに教えて欲しかった、と思う人も多いような気がします。
そして、私が買った版の帯に書かれていたコピー(今の版とちょっとだけ違う)が多くの読者の感想を要約するようで秀逸でした。
『カスガ先生、なんとかやっていけそうです!!』