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不安の強いうつ病について


診察を行っていると、うつ病という診断があてはまる患者さんたちの中でも様々な特徴があることが分かります。

ひたすらエネルギーの低下が前面に出て、話をすることも困難になるような場合や反対に口数は多いが、焦りが強い場合、睡眠や食欲が減少するときもあれば、反対に過剰な睡眠や食欲が目立つこともあります。

今回、ご紹介するMaurizio Fava, M.d.らの論文では不安が強いうつ病(以下“anxious depression=不安抑うつ”と表現)をとりあげ、その特徴について調べています。

題名は

“Difference in Treatment Outcome in Outpatients With Anxious Versus Nonanxious Depression: Star*D Report”(Am J Psychiatry 2008; 165: 342-351)

(Star*Dレポートからの、不安抑うつと非不安抑うつの外来患者における治療結果の違い)

となっていて、大規模な抗うつ薬による治療効果の調査である「Star*D」を検討した研究であることが分かります。(このように大規模な調査が一度行われるとその資料を使用した多くの論文が生まれ、様々な視点から検討が行われることにより知見が深められます)

今回の研究の結果によれば、

①不安抑うつでは、非不安抑うつよりも寛解(症状の軽快した状態が一定期間続くこと)が得られにくく、寛解した場合でも多くの時間を要していた。

②不安抑うつでは、抗うつ薬による副作用の程度や頻度等が、非不安抑うつよりも増加していた。

①については、これまでにも多くの論文で示されていて、不安の強いうつ病は治療が困難であることが確認されたという結果でした。

そして、②については、論文中でも議論されているのですが、不安が強い場合、身体的変化に対して敏感になることが多く、薬物治療そのものから離脱する場合も多く経験されます。

以上のように、同じ病名で診断が行われた場合でも、症状の特徴により、治療の経過や薬剤に対する反応が大きく異なる場合があります。この論文の中では、うつ病の下位分類(より細かい分類)として“anxious depression=不安抑うつ”という診断名の妥当性が述べられていました。

診断名を増やすことの妥当性はともかく、現在現れている病態からある程度経過の予測をつけ、治療の方策を練っていく必要性があることが分かる論文でした。

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