2次障害(併存障害)という言葉があります。
社会性の障害、コミュニケーション障害、イマジネーション(想像力)の障害、反復的活動といった自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の中心的症状に対して、それらと関連して2次的に(引き続いて)起ってくる症状のことを意味します。
ASDにおいて中心的症状は社会生活上重要ですが、精神病症状(幻覚や妄想)・不安・うつ等の2次障害のほうが直接的にご本人や家族の苦痛に結びつき易いということもあります。
今回は児童期から思春期にかけての特性とうつ症状の経過について追った研究をご紹介します。
“Association of Austistic Traits With Depression From Childhood to Age 18 Years”
児童期から18歳までの自閉症特性とうつ症状の関連
これまで特性とうつ症状の関連をある時期において横断的に調べた調査はあったのですが、長期間その軌跡を追ったものは稀でした。今回の調査では、長期に渡り、特性とうつ症状との関連を調べ、その変化の様子を明らかにしようとしたわけです。
結果を大まかにまとめると以下のようでした。
①ASD診断と特性を示す指標の得点が高い子どもは10歳においても一般の子どもよりもうつ症状が強く、それは18歳に至るまで一貫していた。
②様々な特性の指標とうつ症状は関係していたが、最も関連が強かったのは「社会的コミュニケーション障害」の項目であった。
③コミュニケーション障害が強い子どもにおいていじめ(bullying)の報告が多い傾向にあり、この傾向とうつ症状との関連が示唆された(今後の研究で確認の必要あり)。
特に②について、コミュニケーション障害が強い場合のうつへの相対危険度(そうでない場合に比較した病気になり易さの比)は1.68となっており、通常の場合より2倍近くうつになり易いことが分かります。
論文中では、さらに遺伝的素因や環境的要因とその影響のしかたについての考察も行っているのですが、特性のうつ症状への影響が一貫して大きいことが印象的でした。
ASDにおいては、中心的症状のみでなく、特性から派生する2次症状への対応も、長期に渡って非常に重要であることを示唆する内容でした。