レジリエンスという言葉を最近良く聞きます。
精神医学や心理学だけでなく、生物学や教育、社会や経済のしくみにも応用されている大切な考え方らしいのです。
今日はこの言葉の意味を基礎的な部分に絞ってご紹介したいと思います。
元々、レジリエンス(resilience)の意味はジーニアス英和大辞典によると
①弾力性 ②回復力;快活, 元気. ③(弾性力のある物質の)弾性エネルギー ④復元力(攪乱を受けた群衆が元の状態に復帰できる能力)
以上のような意味です。レジリエンスとそのままカタカナ表記されたり、「回復力」や「復活力」という訳されることがあります。
今までこの言葉が使われていた文章や発表の文脈から、「レジリエンス」を自分なりに解釈してみると「逆境に立ち向かう力」や「病気になっても治したり、生活していく力」という内容を表しているように思われます。
その他、もう少し専門的な説明を抜粋したいと思います。分野を限定してメンタルヘルス領域での意味を解説すると
「ストレスの多い状況を乗り越えるために人間が使う仕組みである。次の3つに分類される。①他者からの支援(例えば社会制度によるサポート)を得る力 ②ストレスを乗り越えるために個人が意図的に用いる方策 ③無意識に働く適応のためのしくみ(例えば、不快感や不安、落ち込みを軽減するために知覚を歪める精神機能)
参考:Kaplan and Sadock's Synopsis of Psychiatry, 11th Edition
このように「レジリエンス」という言葉は、単に個人の「からだ」や「こころ」の強さを意味するのではないということが分かります。
ポイントは次の2つではないでしょうか?
①他者の助けを得られるのも「レジリエンス」である。
②「レジリエンス」には意識的なものと無意識的なものがある。
特に、うつ病の患者さんには①を強調したくなることが多いです。要するに「頼っていいじゃないですか? 助けてもらいましょう!」と伝えたいです。
また、②に関しても人間の精神の力は無意識的な部分が膨大なことを考えると、その無意識の力が発揮されるために、生理的な部分(休養と食事、生活リズム等)を整え、精神的な負荷を軽減してある程度余裕を持ってもらうことが必要だと思います。
つまり、「レジリエンス」とは本来持っている力を引き出すことの大切さを訴える言葉でもあると思うのです。