先行する予備的な研究で、抗生剤のミノサイクリンが神経保護作用と抗炎症作用を持っており、これが新規に発症した統合失調症の病理的変化を抑制することが指摘されていました。
抗生剤が精神病の治療に役立つのか?……今回はその検証を行った論文を見てみます。
新規発症の患者における統合失調症の陰性症状に対するミノサイクリンの効果(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)
新規発症の統合失調症の方たち207人をミノサイクリンを飲む場合とそうでない場合とに振り分けて比較しています。12か月間追跡調査し、陰性症状の程度を示す点数とその他、症状以外の指標として前頭葉灰白質の体積、課題遂行時の脳の活性化、血清中のインターロイキン6を測定しています。
結果として、ミノサイクリンは統合失調症の症状を改善しませんでした。また、その他の指標にも意味のある差を生じる結果とはなっていませんでした。
精神疾患の薬物療法の歴史を振り返ると、他の領域で用いられていた薬剤が意外な効果を発揮して、治療方針に大きな変更をもたらすことが繰り返されてきました。
今回も、抗生剤が有効な治療手段の比較的少ない統合失調症の陰性症状の治療薬として登場するきっかけになるのではないかと期待されていたのですが、少なくとも今回の試験では、その方向を進める結果とはなりませんでした。
今後も有効な治療手段の動向に注視していきたいと思います。