非定型精神病について


今日は患者さんから質問があった「非定型精神病とは何か?」について説明させてください。

もともとは定型的な精神疾患とされている「統合失調症」、「躁うつ病」、「てんかん」のいずれにも属さない非定型の病像をもつ疾患であるという意味で名づけられました。(立場①)

それに対して満田久敏は、上記の立場①のような中間的な疾患としてではなく、統合失調症とも、躁うつ病とも異なる独立した疾患として「非定型精神病」という疾患を提示しました。(立場②)

以下は最近再評価されている立場②をとりながら説明をさせてください。

独立した疾患単位としての「非定型精神病」は、以下のような特徴をもつとされます。

The concept of ‘atypical psychoses’: Special reference to its development in Japan

・発症が急性 ・予後は比較的良いが、再発の傾向があり、周期性の経過を辿る。 ・病像は多彩で、情動性障害、精神運動性障害あるいは意識変容を基本症状とし、活発な幻覚妄想体験を伴った錯乱ないし夢幻様状態を呈する。 ・情動性や精神運動性の障害には相性の特徴があり、「躁 - うつ」、「恍惚 - 苦悶」、「興奮 - 混迷」、といった両極間での変動がみられる。 ・病前性格は現実指向性で、几帳面、熱中型、他者配慮性。 ・遺伝負因を持つものが多い。 ・初発や再発では、誘引を契機とすることが多い。

要するに「一時期、統合失調症のような症状を呈するけれども、発症や予後、経過中の周期性や気分変動、認知や遂行機能が保たれるなどの点で躁うつ病との共通点が多い疾患」ということができます。

とくにリハビリテーションなど、社会的機能が重視される立場から言えば、予後や機能的観点から言っても、感情障害との類似点がもっと強調されるべき疾患であると思われます。

なぜ、この疾患を別の疾患としてみるべきかは、実際に臨床場面で経験すると多くの点で明らかになります。

なんとなく「統合失調症のような病気」としてみていると気が付かないこともあるかもしれませんが、発症の様式などから「これは非定型らしい」と思いながら注意してみていると、実際に統合失調症とは全く違う経過をとるので、この疾患の存在を他の病気とは異なるものとして強く認識することができます。

そして、その後の経過予測も大きく異なるので、治療内容や本人・家族への説明も自然と異なってきます。(使う薬剤の種類や減量・中止のタイミング、生活上の注意の力点も異なります)

このように「非定型精神病」を他の疾患と異なるものとして認識している立場から(あるいはこの疾患概念は患者さんにとって利益があると感じている立場から)、最近の再評価の流れは有り難いと考えています。

……(詳しすぎてかえってわけが分からなくなりそうですが)一応、以下に近年作成された診断基準を転記させてください。(須賀英道「急性精神病における非定型精神病の再評価」『精神科治療学』第25巻第9号、星和書店、2010年9月)※試案についてはネット上でも入手可能です。

非定型精神病診断基準 A:精神的に健康な状態から,突然,精神病症状(B 症状)が発現し,顕在化(診断基準に該当すること)まで2週間以内であることB 症状の発現前に前駆症状(不眠,不安)が出現することがある。 B:次の3つの項目のうち少なくとも2つの症状 が同時に起こること ・ 情緒的混乱a) ・ 困惑,および記憶の錯乱b) ・ 緊張病性症状c)または,幻覚または,妄想 C:障害のエピソードの持続期間は,3ヶ月未満で,最終的には病前の機能レベルまでおよそ回復すること 3ヶ月後に診断確定となるが,それまでは「疑い」とする D:物質または一般身体疾患の直接的な生理学的作用による障害は除外とする 用語説明 a)情緒的混乱:至福感や恍惚感,著明な不安,著明な易刺激性を特徴とするもの b)困惑,および記憶の錯乱:当惑,困惑,人物や場所の誤認,思路の錯乱 エピソード後に健忘を残すことがある 多形性に現れる c)緊張病症状:以下の項目のうち少なくとも1つの症状がみられるもの 1)カタレプシーまたは昏迷として示される 無動症 2)過度の運動活動性 3)極度の拒絶症あるいは無言症 4)常同姿勢,常同運動,顕著な衒奇症,顕著なしかめ面などとして示される自発運動の奇妙さ 5)反響言語または反響動作 下位項目の特定 該当すれば以下の項目を特定すること 1. 著明なストレス因子のあるものまたは著明なストレス因子のないもの 2. 遺伝負因のあるもの(第一級親族内) または遺伝負因のないもの 3. 前駆症状のあるものまたは前駆症状のないもの

#非定型精神病

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