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ぼくは強迫性障害 筒美遼次郎著


「強迫性障害」という病気について聞いたことはあるでしょうか?

潔癖症、心配性、完璧主義など一般的な呼び方では、そんな言葉で表現されていることがあります。

例えば「スイッチをちゃんと切っただろうか?」、「手やからだが汚れていないだろうか?」……私たちはさまざまな不安とともに生活していますが、そのような不安が強くなりすぎて、何度確認しても安心できなくなった状態が典型的です。

やや一般的にイメージしやすいように、日常的に考えられるレベルで説明しましたが、実際にこの病気にかかると非常に苦しく、確認行為にかかる時間が膨大となり、そのために仕事を止めざるをえなくなったり、外出が不可能になったりします。中には大切なものを捨ててしまわないか気になってゴミが捨てられなくなる等、日常生活のあらゆる場面に影響の大きな病気と言えます。

今回ご紹介するのは、この「強迫性障害」の症状に関する悩みや、軽減するための様々な取り組みを綴った体験記です。

元は高校の英語教師で、強迫性障害の症状が原因で退職し、教師→書店経営→学校警備→再び教師 というように紆余曲折を経て、現在は再び教職についておられるようです。

以前教師だったころの体験が書いてある部分を抜粋させてください。

「……とにかく完璧主義が激しく、しかも自分がやったことの足跡がちゃんと残っていないと気になり、膨大な時間がかかっていました。印刷室で試験問題を落としてもいないのに落としたのではないかと心配して、1時間くらいうろうろして何度も何度も確認したこともありました。あの時は、他の先生や副校長先生も印刷室に入ってきたので、かなり変に思われていたと思います。でも病気だとは思っていなくて、『変な性格だなあ。教師には向かないのかな』というふうにとらえていました。」

退職された後、心療内科には受診し、薬物も試みられたようです。しかし、症状は楽にはならず、その後、自分でさまざまな本を読みながら勉強し、現在では症状をコントロールすることにかなり成功されています。

認知行動療法、森田療法、フォーカシング、タッピング(TFT)、環境調整などそれぞれに良いところを取り入れながら試行錯誤されています。結論として、どれか一つというわけではなく、囲碁やペット飼育などの活動も含めて、すべてが総合的に作用して、症状の大きな改善につながったようです。

ひとつ重要なことをあげるとすれば、この病気の治療には患者さんの主体的な取り組みが、非常に重要であるということです。反応妨害などの行動上の原則を守るためには、苦しみをともないますので、患者さんの意志が非常に大切になってきます。

本書には症状への取り組みが、詳しく具体的に書かれており、とても参考になります。また、現在症状に悩まれている患者さんにとって勇気を与えてくれる本だと感じました。

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