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精神疾患と遺伝的特性の関係


精神疾患への遺伝的影響を検討するとき、双子の遺伝情報と病気の発症が調査されることがあります。

一卵性の双子の場合、同一の遺伝情報を持つため、遺伝的要因と環境的要因の影響についての検討が可能となるためです。

今回はスウェーデンで行われた大規模な双子の研究を紹介します。

スウェーデンの双子データにおける精神障害の危険因子と基礎的特性の関連

今回の調査で特徴的なのは精神障害の発症についてのみではなく、臨床的には問題となっていない特性について検討している点です。

9歳時の13000組以上、18歳時の4000組以上の双子が対象となり、長期にわたる研究が行われました。

遺伝情報から多遺伝子による危険指数(polygenic risk scores: PRSs)が求められ、さらに質問項目から自閉症スペクトラム障害、ADHD、学習障害、チック障害、強迫性障害、不安障害、うつ病、躁うつ病、精神病症状の特性に関する調査が行われました。

結果としてほとんどの障害に対して、精神障害発症の危険因子とされる遺伝的要因と病気以前の特性との関連が指摘されました。

つまり、ほとんどの精神障害の遺伝的要因は障害発症の危険因子というよりは、程度の差こそあれ、個人の特性を表現するものであるということだと考えられます。

最近、自閉症スペクトラム障害のみでなく、様々な精神障害にスペクトラム概念の提唱が行われていますが、今回の調査結果からも、精神障害は多くの点で白か黒かという二分法ではなく、その中間的状態を多様に含む連続体(スペクトラム)であることが示されたように思われます。

今後、精神疾患として明らかな状態のみではなく、病気には至らない基礎的な傾向を広く評価していく方向へ診断の枠組み自体が変化する可能性があるように感じました。

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