
これまでにも高齢者の向精神薬服用で、肺炎が増加するという話はありました。特に認知症にともなう興奮や行動変化に対する抗精神病薬について、そのような例の報告が認められます。
その他にも、多様な薬剤に関する問題は今までにも知られており、例えば、転倒や傾眠(つねに眠たい状態)の発生にはいつも注意する必要があります。
今回は、高齢者の不眠等に処方されることが多い「ベンゾジアゼピン系」という種類の睡眠剤や抗不安薬がどのような影響を及ぼすかを分析した研究(メタ分析)についてご紹介します。
ベンゾジアゼピン類似薬と肺炎の危険性(システミック・レビュー)
120,000例の肺炎患者を含む10本の研究が分析の対象となりました。
「ベンゾジアゼピン系」というのは「睡眠薬」や不安を鎮める「抗不安薬」として最も使われて薬剤の種類ですが、今回はこの種の薬剤をつかっている場合と、そうでない場合の比較が目的となっています。
この分析ははメタ・アナリシスという「研究についての研究」なので、妥当性の高そうな研究が選ばれて、それらを統合した結果が導かれました。
主な結果として、ごく最近あるいは現在「ベンゾジアゼピン系」を飲んでいる場合には、1.25倍「肺炎」にかかりやすいことが分かりました。
「肺炎」は高齢者の死因のうちでも最も主要なものの一つです。不眠や不安等のご本人のつらさや、環境への適応を考えた上で処方される薬剤ですが、以上のような危険性に十分配慮し、慎重に処方を検討したいと考えました。