強迫性障害の治療に関して書かれた本としては定番といえるかもしれません。この分野の第一人者が詳しく症状や治療に関して説明しています。
まず、目次を概観してみると以下のようになっています。
第1章 強迫性障害とは
第2章 どんな治療法があるか
第3章 自分をチェックしてみよう
第4章 目標の定め方
第5章 行動療法の実施へ
第6章 コントロールの保ち方
第7章 OCD(強迫性障害)と近縁の障害
第8章 薬物療法について
第9章 あなたの疑問に答えよう
第10章 家族、友人、そして協力者のために
特に行動療法(暴露反応妨害法)の準備のために、第3、4章でしっかりと評価→目標設定という過程が詳述されています。治療に入る前のこの段階を大切にされている点からも、内容に信頼がもてる印象を強くしました。
各章で様々な症例をあげ、具体的なイメージが持てるように助けられています。文章量も多く、専門的な内容も含まれているため、敷居が高く感じられるかもしれませんが、多くの例が理解を促し、物語性をもって記憶に残ります。
強迫性障害の行動療法について詳しく書かれた本として貴重である上に、抜毛症やチック症状などの近縁の障害(症状)についても、まとまった記述があり、共通のしくみや治療について理解できます。
さらに、すばらしいと思ったのが第9章の疑問への回答と、第10章の協力者への助言です。しばしば尋ねられる質問への回答を丁寧に行っているのと、いかに周囲の人が本人の本当の意味での「味方」になることができるのかが説明されており、非常に参考になります。
最後の協力者に向けた部分を抜粋させてください。
「協力者のもっとも重要な特性は、知識、思いやり、確固とした態度および忍耐力であることを覚えておいてほしい。愛する人や友人がOCD(強迫性障害)をコントロールできるようになるための手助けができることをわたしは願っている。」