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精神疾患にかかわる人が最初に読む本 西井重超:著


タイトルの通り、これから精神疾患にかかわろうとする人が最初に手にとっても理解しやすい解説がされています。

それと、非常に特徴的なのが「カワイイ」イラストがそれぞれの解説で添えられており、印象的で記憶に残りやすくなっています。

対象を「精神疾患にかかわる人」と書いてありますが、少し冷静に自分の疾患について考えられる人であれば、当事者の方にもすすめられます。

本書の意図を紹介するために、「はじめに」の一部を抜粋させてください。

「……執筆するなかでめざしたのは、『正解は厳密に言えばこう』ではなく『大体こんな感じ』ということを伝える、教科書とはまた違った方向の書籍です。本書を手に取った専門家のなかには、あまりにもザックリすぎるという感覚をもたれたり、表現が俗っぽく不適切だと感じられる方もおられるかもしれません。そういう専門家の方とは精神医学の伝えかたが違うにしても、われわれは精神医学の知識をより多くの人に理解していただき、精神医学的な問題をもつ人も含め、すべての人が生きやすい世の中をつくる共通の目的に向かって走っているのだと認識しております。」

記述は確かにザックリとしているのですが、「感じ」が伝わる光った表現が多いのと、経験に基づいて書かれている箇所も例が適切で、理解を助けられます。

さらに、通常の入門書のように範囲が限定されておらず、かなり網羅的です。以下に第2章の「精神症状」についての一部のみ目次を抜粋します。

〈知覚の障害〉

錯覚

幻覚

 幻聴

 幻視

 体感幻覚

〈思考の障害〉

観念奔逸

滅裂思考

思考制止

思考途絶

思考化声

迂遠

保続

支配観念

強迫観念

作為思考

思考吹入

思考伝播

妄想

 妄想気分

 妄想知覚

 妄想着想

 微小妄想

  心気妄想

  貧困妄想

  罪業妄想

 誇大妄想

 被害妄想、関係妄想

  注察妄想

  被毒妄想

  追跡妄想

  嫉妬妄想

  憑依妄想

  物理的被害妄想

…………

これらの用語について専門家でも、すぐに適切な解説をできる方はすくないのではないでしょうか?

まず、このような精神症状についての解説を一つの症状に1ページを割いて、イラストを添えて解説しています。

この章だけでも、「記述精神病理学」と言われる領域の概観を行うために非常に役立つのではないかと思いました。

精神疾患や症状についての解説本は多いのですが、これだけ分かりやすく、印象に残る工夫がなされていて、新しい知見の入った、公平な記述の本はちょっとないのではないかと思います。おすすめの本です。

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