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大気汚染と思春期の精神症状


以前に大気汚染の程度が大きいと認知症の危険率が高くなるという内容の論文をご紹介したことがあります。(記事:大気汚染と認知症との関連

因果関係についての明確な根拠は分かっていないのですが、同様に認知症以外の精神症状についても調査が行われており、成人については関連性が指摘されています。

今回は、思春期の精神病症状(幻聴や妄想を含む)と大気汚染との関連を調べた研究についてです。

大気汚染への暴露と思春期における精神病症状の経験との関連

イギリスの1994から1995年に一定の地域に生まれた2000人以上の子どもが調査の対象となりました。

その子どもたちが12歳から18歳まで過ごした環境の大気の状態についてNO2、NOx、PM2.5、PM10の濃度と精神症状(医学的治療までは必要ない幻聴や妄想のみの症状も含む)について調査されました。

精神状態に影響がありそうな他の要因(社会経済的な状況、遺伝負因など)について調整したあとでも、かなり大きな割合(最も影響の大きかったNOxで1.72倍)で大気の状態が悪い方が、思春期の精神症状の発生する可能性が高くなることが示されました。

現在のところ因果関係として、著者は大気汚染が脳の炎症を惹き起こしている可能性を指摘しています。さらに、大気汚染のある都会生活に付随する因子として騒音やその他の都会に特有のストレスも検討が必要だとしています。

このような二つ以上の要素が同時に存在しやすいかどうかを調べるのみの調査では、因果関係の推測は困難です。しかし、今回ご紹介した論文は、都会生活による精神状態への影響が大きいことが推察される内容であり、今後さらに因果関係を含めた信頼性の高い研究が望まれます。

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