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発達障害の遺伝負因と妊娠期の環境要因について


妊婦のアルコール摂取や喫煙、感染症などのような妊娠期の環境要因が、胎児の発達障害に関するリスク要因であることは以前から指摘されています。

これとは別に、発達障害のリスクになり得る遺伝負因(遺伝子上の要因)があり、上記の環境要因とは独立して影響を与えていると考えられてきました。

今回は、Q:「妊娠期の環境要因や遺伝負因は本当に独立して、それぞれ別個に発達障害の原因として影響しているのだろうか?」という疑問に答えようとした論文をご紹介します。

妊婦の神経発達的遺伝負因と早期暴露との関連について

イギリスの研究で、7921人の遺伝子に関するデータ(“多遺伝子リスクスコア”と呼ばれる疾患に影響する遺伝子多型をスコア化したもの)と妊娠期や発達早期の環境要因が調査されました。

①遺伝子に関するリスクスコア、特にADHDに関する遺伝子上のリスク

②環境要因(例として、感染症への罹患、妊娠後期のアセトアミノフェン使用、低い血中水銀濃度、高いカドミウム濃度など)

は関連し合う要素であることが分かりました。

つまり、①遺伝子リスクと②環境要因とはともに関連し合っているので、それぞれを別個に原因として分析することはできないということになります。

細かいことを言っているようですが、それぞれの要因が独立に結果に影響を与えているのかを知ることは、原因にさかのぼって治療や予防を考える時に非常に重要です。

今後は、上記の①と②の要素は交絡因子(お互いに影響し合う別個にには扱うことができない要因)であるという視点から、発達障害の原因を考えていく必要がありそうです。

どうしても私たちは注目している原因を、単独の影響因子として考え、それを中心として対策を立ててしまいます。

しかし、実際にはその要因自体が、全体としては網目のような相互関係の中で影響の絡み合った要素であることも多く、単独要因であることを前提として立てた対策が、ほとんど効果をあげないという事態をしばしば体験します。

一つの要素を原因ではないか検討する時には、常に交絡の可能性を考える視点を持ちたいと思いました。

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