統合失調症といえは、幻覚や妄想などの目立つ症状が有名です。
しかし(一概には言えないのですが)、多くの発症者で知能の低下も経験します。
今回は、統合失調症における知能低下が、どのように進行するのか調べた研究をご紹介します。
統合失調症と他の精神病性疾患における最初の入院から10年間の認知機能変化
統合失調症65人、そのほかの精神病性の疾患41人、比較対照としての健常者103人について10年間の認知機能変化を調べました。
結果として、統合失調症においては、最初の入院からの10年間で、言葉の理解・記憶の低下を認めました。しかし、処理速度と遂行機能については最初の入院時にすでに低下を認めており、その後は安定していました。
記憶の低下については統合失調症に特徴的というわけではなく、他の精神病性疾患においても認めていました。
健常者のうち知能指数の低い場合においては、認知機能の低下が進行するようなことはなく、低下の進行は統合失調症や他の精神病性疾患に特徴的な所見であると考えられました。
通常、統合失調症においては発症からの急性期(第一エピソード)で知能低下を認め、その後の認知機能は安定して推移することが多いと考えられてきましたが、今回の研究では認知機能の低下が進行することが示されました。
今後、急性期の治療だけではなく、この進行の過程を予防することにも注目すべきであると思われました。