
ヘモグロビンという赤血球の中に含まれている色素は、しばしば貧血の指標として用いられることがあります。
施設や文献によって基準値は異なりますが、一つの例として成人の基準値を示すと「男:13~17 女:12~15(g/ dl)」となります。
これよりも著しく低い場合は、様々な原因による「貧血」を考え、高い場合は真性や二次性の赤血球増加症を考えます。
今回は、これらのヘモグロビン値の変動が後年の認知症発症の予測に役立つかもしれないという内容の論文をご紹介します。
MRI上の変化を伴う認知症リスクからみたヘモグロビン値と貧血について
認知症のない12305人(平均64.6歳、女性57.7%)について、平均12.1年の経過を調査しました。
結果として、貧血を伴っていた場合、通常よりも41%高い割合でアルツハイマー病になり易く、また他のタイプの認知症になる可能性も34%上昇することが示されました。
また、逆にヘモグロビン値が高い場合にも、通常の場合より認知症全体の発症リスクが高いことが分かりました。
この研究は直接的にヘモグロビン値の変動と認知症の因果関係を示すものではありませんが、貧血による低酸素が神経細胞に傷害を与えた可能性や、赤血球の増多による血管閉塞のリスク上昇などの機序が考えられます。
いずれにしても、血液成分の基準値からの大きな逸脱は、短期的な健康状態の乱れを示すだけではなく、長期的な認知機能の低下を予測する指標ともなり得ると考えられました。