以前にも大気汚染が精神疾患の発症率に影響するという内容についてご紹介したことがあります。
昨日、ご説明した多遺伝子スコアからみた遺伝的要素の貢献等、精神疾患発症に対する遺伝的素因のなす役割は大きいのですが、それですべて説明できるというわけではありません。
多くの精神疾患が遺伝的素因と環境との相互作用によって発症すると説明されており、遺伝的に発症リスクが高い場合には、特に環境的要因を軽減させる対応が重要であると考えられます。
今回は、アメリカとデンマークのデータベースをもとに環境と精神疾患との関連を調査した大規模な研究について説明させてください。
アメリカとデンマークにおいて環境汚染は精神疾患発症リスクの上昇と関連がある
アメリカにおける1億5,000万人以上の保険データとデンマークの約140万人の疾患登録データについて調査されました。
環境汚染については、例えばアメリカでは環境保護庁の大気汚染指標等が参照されました。
結果として、アメリカにおいては大気汚染と双極感情障害、土壌汚染とパーソナリティ障害との関連等が示され、デンマークでは大気汚染と双極性障害、うつ病、パーソナリティ障害、統合失調症との関連が示されました。
具体的な例としてアメリカでは最も汚染物質の濃度が高く、大気の質が悪い地域では、最も質の良い地域に比較して27%、双極性障害の発症リスクが高いことがあげられます。
このようなことが起こる背景として、汚染物質が神経系の炎症を引き起こす機序が想定されます。
私達は通常自分たちがどのくらい精神疾患の遺伝的リスクを抱えているのか正確には知り得ませんが、予防的方策としてできるだけ既知の環境的要因を軽減する努力をすることが考えられます。
環境汚染はその中でも、検討を要する非常に重要な要素であると思われました。