
うつ病の発症後、気分の落ち込みや意欲の低下等が治まり、「寛解」と呼ばれる時期を迎えた後にも、記憶や思考能力の一部に低下する領域があるのではないかと言われてきました。
今回は、うつ病後の寛解期にどのような知的機能の変化が認められるのか、多くの論文をまとめて分析した結果について紹介させてください。
うつ病エピソード後の認知(知的)機能
11882人のうつ病エピソード後の寛解者を含む、252の論文が選考の基準を満たしました。
それらの論文には75の知的機能の指標が含まれていましたが、そのうち55(73%)の指標において、うつ病後では低下を認めていました。
それらの指標(処理速度、選択的注意、作動記憶、言語的理解、遂行機能等)の低下はほとんどの場合、僅か~中等度(small:30%、medium:22%)でしたが、長期記憶においてだけは大きな低下を認めました。
また、知的機能の低下を大きくする要因として、うつ病になった回数(エピソード数)が関連していました。
このようにうつ病では、病期における中心的症状だけではなく、寛解後の知的機能の低下や、再発を繰り返すことによるさらなる遂行機能の低下等について、注意しながら治療や経過観察を行う必要があると考えられました。