親子間でなされる話し合い(口論やけんかを含む)において、子どもの“安全”というのは非常に大きなテーマであると思われます。
親としては良かれと思ってなるべく安全な道を進んでほしくて、様々な点で注意や指示を行ったり、行動に制限を加えたりします。
しかし、それが子どもの反発を招いて大きな溝が生じ、特に心理的独立が大きな課題の一つである思春期においては親子関係に葛藤をもたらすことも多く認められます。
今回は、このような“安全”をめぐる親子間の葛藤の背景を調べた研究をご紹介します。
思春期前における安全に関する親子間の葛藤
まずは親に質問紙に回答してもらい、次月に親に安全性をめぐる葛藤(不一致)について、子に親から守ろうとした秘密について回想してもらいました。
次のような傾向がありました。
①女子は比較的、安全に関わる話を自発的に行い、親もそれに応じて話し合い、助言を与えていました。
②男子は、親子間の関係性によって大きく対応が異なり、関係が良好なときには、そのようなテーマに関しても話す傾向がありました。
③全体として、子どもたちは、自分たちの自律性と独立を維持するために、安全性に関わる情報を、両親から隠す傾向がありました。
つまり、女子は比較的オープンに自分の危険がないように情報を開示するのに対して、男子はぎりぎりまで自分の独立のため秘密を堅持するということになります。
今回対象となったのは一般的に思春期と言われる時期よりは以前の10~13歳であり、この時期にどの程度自律や独立を尊重するかは難しいところだと思われます。
しかし、ある程度独立した姿勢を身につけて欲しい次のステージへの布石となるように、子どもの自尊心を傷つけないバランスのとれた対応をしたいと考えました。