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PTSDに対するイメージを用いた持続エクスポジャー

#PTSD #エクスポジャー


PTSDに対してエビデンス(医学的証拠)では、“暴露療法(エクスポジャー)”が有効であることは分かっていても、なかなか導入しにくいのが現状です。


まずは、私を含めてしっかりとトレーニングを受けた治療者が少ないこと、それから、実際有効だという話を聞いたり読んだりしても、苦手なことに接して頂く(自分を暴露する)やり方に抵抗感が湧いてしまいます。


自分がすることを考えても大変なことだと思うのです。精神や身体が異常を来すほどの体験や苦手な対象を、思い出したり接してもらうのには大きな“痛み”が伴うはずです。


実際にこれを行うことで悪化する場合も知られており、特に大きな事故や災害に関するPTSDに適用するには、正しい知識(指導者)が必要だと思われます。


今回ご紹介する症例は福島の原発事故後に発症した遅発性のPTSDに関するものです。


福島原発事故に伴う避難により発症した遅発性PTSDに対する持続エクスポジャーの有効性


30歳台で東日本大震災を経験した男性で、福島原発20Km圏内からの避難を余儀なくされ、震災後長期に渡り避難生活をしました。当初、悪夢などのPTSD症状がありましたが、まもなく軽減していました。しばらく後、元の住居に近い場所に新しい住居を求め、転居し、新しい仕事に就職しました。新しい仕事は、それまで彼が行っていた仕事とは非常に異なっており、なかなか上手く取り組むことができませんでした。徐々に、気分が落ち込み、不安が強くなっていきました。そして、強い焦りや攻撃性を伴うに至って、医療施設を受診しました。当初は抗うつ薬や気分安定薬による治療が行われ、気分に関する症状は安定しました。

しかし、気分障害が軽減するにつれてフラッシュバック等の再体験症状、不眠等の覚醒亢進症状、関連するものを避ける回避症状が明らかになりました。そして、これらに関しては薬物療法の効果がなく、ご本人と治療担当者との相談の結果、持続エクスポジャーを行うことになりました。

最初のコースは週1回、6週に渡って行われました。フラッシュバックの映像は震災直後に見つからない子どもを探し回っている、というものでした。実際には子どもは助かってその後も一緒に生活していましたが、彼はその恐怖感を拭えず、何度も同じシーンを反芻していました。これに対して、治療者と一緒に安全な環境でその記憶を思い起こすことによる、イメージを用いたエクスポジャーが行われました。コースの後、間もなく症状は安定しました。

次に3ヶ月後、さらに抑うつや不安が襲うようになりました。今度は、高所で被災したときの経験が忘れられず、繰り返しその時の感覚を思い出していました。これも最初のコースの時と同様に治療者と安全な環境で記憶をなぞることにより、症状は安定しました。


以上のように、実施するのにはハードルの高い印象もあるエクスポジャー(暴露療法)ですが、正しく実施された場合の効果は高いようです。


しかし、心的外傷の程度が深い場合ほど、どうしても慎重にならざるを得ない治療法であると感じました。


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