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強い怒りを伴ううつ病について


うつに伴って現れるのは気分の落ち込みだけではありません。以前に不安の強いうつについて書きましたが、不安や悲しみ、焦り、虚しさ等様々な感情を伴うことがあります。

今回は強い怒りの感情を伴ううつに関する症例報告をご紹介します。

うつは単なる悲しみ以上のものである:過剰な怒りを伴う症例とうつの治療

Indian J Psychol Med. 2014 Jan-Mar; 36(1): 77-79.

重いうつ病への主な治療法は薬物治療が中心ですが、その効果は抑うつ(気分の落ち込み)や不安に限定されており、怒りへの効果は少ないと言われています。

この報告では、怒りの爆発を伴う中等度うつ病の男性(27歳)の例を説明しています。要約すると以下のようになります。

①気分の落ち込みを主訴として、不眠(入眠困難や早朝覚醒)、食欲の減少、疲れ易さ、感情の起伏の消失、強い苛立ち、頻繁な怒りの爆発、身体的・言語的な暴力、自傷行為といった症状を3~4か月認め、それらの症状は時間の経過とともに悪化していた。

②抗うつ薬による薬物療法は気分の落ち込みには効果的であったが、苛立ちや怒りには効かなかった。

③薬物療法にアンガーマネジメント(怒りの制御)を含む認知行動療法を行ったところ、自覚的な怒りの制御に約70%の改善があり、さらに抑うつの軽減(最終的にはうつの診断基準以下)も認めた。

④今回のアンガーマネジメント/認知行動療法で行った手法は、うつの性質や怒りの重要性に関する心理教育、怒りの前兆・行動・結果を含む怒りの記録、怒りの程度の点数化、Jacobsonの筋弛緩訓練と深呼吸に関する教育、気晴らしの技術(distraction technique)、認知再構成法を含んでいた。そして、これらの手法を治療が終結してからも実践することの重要性が強調された。

⑤結論として、今回の例では薬物療法の効果が限定的であったが、アンガーマネジメントを含む認知行動療法により怒りの軽減を図ることが可能であった。よって、苛立ちや怒りの問題を伴っている例では、怒りに特化した心理療法の必要があると思われた。

また、怒りの制御に認知行動療法が有効であるとのメタアナリシス(複数の研究を合わせた分析で、治療の有用性の証拠となり得る)についても触れられていました。

今回の論文は、薬物療法で十分な効果を認めなかったとき、あるいは症状から効果が限定的であると考えられたときには、心理療法を追加する必要のあることを示唆する内容でした。

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