
思春期はうつ病発症の危険率の高い時期として知られていますが、以前からこの時期に抗うつ薬を使用する是非については議論の対象となってきました。
特にSSRI(選択的セロトニン再取り込阻害薬)については、思春期における使用が自殺の危険性を増すという説があり、薬剤の添付文書でも注意が喚起されています。
しかしながら、治療が遅れることによるデメリットも指摘されており、世界的には主なガイドラインで、心理療法との併用でSSRIの使用を容認する立場がとられています。実際上、(病態にもよりますが)投与が行われているのが現状と言えます。
今回は、抗うつ薬を服用している思春期の患者が抗うつ薬による薬物療法をどのようにとらえているのか、調査した研究をご紹介します。
意味と投薬: 心理療法との併用でSSRIを服用している思春期のうつ病患者における認識と経験に関するテーマ分析
質的研究といわれるインタビューから情報抽出を行う手法で、薬剤投与に対する主な認識の仕方が示されました。
多くの参加者は以下のように抗うつ薬投与をとらえていました。
①‘a perceived threat to autonomy’ 自主性への脅威
→薬を服用することによって、自分らしくさまざまなことを感じる「aoutonomy 自主性」が脅かされるのではないかという怖れ。
②‘a sign of severity’ 重症である証拠
→薬を服用すると、薬を飲まなければならないほど病気の状態が悪いという証拠になってしまうという捉え方。
③‘a support, not a solution’ 助けではあっても、解決ではない
→薬剤の服用はある程度助けにはなるかもしれないが、根本的な解決となるわけではないという考え。
④‘an ongoing process of trial and error’ 進行する試行錯誤の過程
→薬物療法は使用する薬剤のタイプや用量、服用頻度の調整など、常に進行しつつある試行錯誤の過程であるという認識。
主なものとして抽出された以上のような認識をみると、もし薬物の服用が本当に必要ならば、抗うつ薬の性質について正しい情報を伝えながら相談を重ね、本人が納得した上で使用するべきであると思われました。