視線の運動の異常が神経・精神領域の疾患で参考にされることがあります。アルツハイマー病などの変性疾患でも特徴的な変化が生じることが指摘されており、研究が徐々に進んでいる神経学的な指標の一つと言えます。
また、統合失調症でも目の動きに特徴があることが指摘されていました。例えば、視覚的に目的の対象を探す探索運動の距離が短く、十分に全体が認識できないこと等が起こります。
今回の論文は、統合失調症における視覚的な運動と認知機能との関連について調べた研究です。
統合失調症における視覚運動の異常と認知障害との関連
眼科的には問題のない113名の統合失調症患者が対象となり、視覚的機能と認知機能(知能検査の結果)について検討が行われました。
結果として、以下のことが分かりました。
①視覚的な探索距離が知能検査の結果と大きく関連していた。
②知能検査の中でも「行列推理」と言われる視覚的なパズル要素のある検査が、最も関連性が強かった。
つまり、統合失調症における認知機能と視線運動の異常は関連していて、その中でも全体のまとまりを考える能力の低下が大きかったということになります。
以前から、統合失調症の中核的症状は認知機能障害であり、長期的な生活への影響も非常に大きい点が指摘されてきました。
しかし、目立つ症状である幻覚や妄想に注目が集まる傾向があり、薬物療法などの治療もその症状の軽減を指標として行われる傾向があります。
統合失調症の認知機能の障害に対するアプローチは現在徐々に行われてはいるのですが、治療の標的としてまだ主流とはなっていないのが現状といえます。
今回の研究結果は、統合失調症における認知機能障害に関する理解を深め、治療の可能性を探る上で大きな布石になるように思われました。
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