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どうして女性の方がうつになり易いのか?


うつ病の疫学として、単極型のうつ病は、軽症を含めると人口の5~25%がかかり、双極型の感情障害(躁うつ)は男=女の比率ですが、単極型のうつ病では女>男であることが以前から指摘されています。

実際、2010年の統計では世界的にみた罹患率が女性5.5%、男性3.2%と女性が男性の1.7倍となっています。

どうして女性の方がうつの罹患率が高いのか?

以前から諸説があり、女性のうつ傾向の原因として考えられてきた代表的なものを挙げると、被虐待的な立場に陥りやすいこと、教育歴が低くなり易いこと、文化的に活発さが奨励されない傾向があること、社会経済的に恵まれない頻度が高いこと等があります。

しかし、世界でこれらの傾向が特に高い地域と、比較的そのような傾向が弱い地域とを比較しても、うつ病の男女比率は変わらないという事実があります。

そのようなことから考えるとどのような地域でも共通する生物学的な要因の方が大きな影響を与えているのではないかと考えられます。

特に最近、サルを対象とした研究で、女性ホルモンの影響が詳細に調べられています。

メスザルの中でも閉経し、女性ホルモンが低下している場合には、人間のうつと同様の症状を示し、脳内のセロトニン濃度が低下し、脳の海馬領域の体積が小さくなることが指摘されています。

また、女性で卵巣ホルモンを含むホルモン剤を使用している場合には、月経前症候群等の月経周期に関連したうつ症状が軽減することが知られています。

これらの様々な現象から、女性ホルモンがうつに対して保護的に働いており、これが変化することで女性にうつをひき起すのではないかと考えられます。

しかし、女性ホルモンがうつに対して保護的に働くのなら、それが働いていない男性でなぜうつが少ないのでしょうか?

実は、男性の体内には男性ホルモンを女性ホルモンに変化させるしくみ(CYP19と言われる酵素による変換)が存在します。

さらに、男性の脳内にはこれらの女性ホルモンの受け皿(estrogen receptor β)が分布しているため、女性ホルモンの脳内機能の恩恵を受けている可能性が高いのです。

もちろん、根本的な男女の差(性染色体の構成の差)はホルモン調整のみに現れるものではなく、脳神経回路の構成上の違いも指摘されています。

しかし、現在は主に上記のような女性ホルモンの保護作用に注目することで、女性のうつに対応できる治療法(例として先日の記事:アメリカで産後うつの薬が認可)が模索されている状況のようです。

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