
通常言われる遺伝的な情報の特徴(塩基配列の多型)とは違って、一つの細胞にどれくらい一つの遺伝子のコピーが存在するかを示す特徴を「コピー数多型(copy number variants:CNV)」と言いますが、最近これが病気の罹りやすさや、薬剤の効きと関連していることが指摘されています。
今回は、特に神経発達領域に関連するとされるCNVがうつ病の発症にどのように影響しているかを調べたイギリスの大規模研究をご紹介します。
稀少なコピー数多型とうつ病リスクとの関連
イギリスのデータベース(Biobank)のおさめられている40万人以上の情報が分析されました。
神経発達と関連があるとされている53のCNVとうつ病との相関が調べられました。
CNVとうつ病の発症の関連は認められたのですが、それらは身体的健康、教育歴、喫煙歴、飲酒歴等の他の要素で説明可能な相関で(これらを同じ条件にした場合には関連性がなくなるということ)でした。
これらの要素はうつ病の発症リスクと考えられており、大きな意味ではCNVとうつ病のリスクとは関連しているといえますが、単独で影響が大きい要素ではなさそうです。
コピー数多型は遺伝情報の中で比較的新しく発見された特徴で、まだまだ理解されていないことが多い領域です。今後も、精神疾患との関連で有益な情報が発見されることが期待されます。