不安を基礎とする精神疾患は多く、全般性不安障害・パニック障害・強迫性障害・社交不安障害などが含まれます。
また、うつ病と不安障害との合併が多いことや、多くの精神疾患で不安の訴えがみられ、抗不安薬を追加することが多いことなどを考えると、症状としての不安は、人間の精神的不調にとって基礎的な症状と言って良いかもしれません。
特に子どもは分離不安などを経験し、それが遷延したり、対処能力が低い状態で多くの環境変化を経験することも多く、不安を主訴とする精神疾患の発症が多いと言われています。
今回は(かなり以前の論文になりますが)子どもや若い世代の不安に対する治療法として、根拠のある実践はどのようなものか調査したメタアナリシス(複数の研究結果を分析し、より信頼性の高いデータを得ようとする分析)の紹介です。
Comparative Effectiveness and Safety of Cognitive Behavioral Therapy and Pharmacotherapy for Childhood Anxiety Disorders A Systematic Review and Meta-analysis
子どもの不安障害に対する認知行動療法や薬物療法の有効性と安全性の比較
7719人(平均9.2歳)の対象者を含む115の研究(ランダム化試験や非ランダム化試験を含む)が分析されました。
結果として以下のことが示されました。
①SSRIやSNRIは大きく不安の改善に寄与していました(特にSSRIの効果が大きく、「寛解」は2.04倍、「反応」は1.96倍と改善を生じる割合はほぼ2倍となっていました)
②認知行動療法(以下CBT)の「寛解」と「反応」を合わせた改善率も、上記の薬物療法と同様に大きくなっていました。
③CBTと薬物療法を併用した場合は、薬物療法のみよりも改善する割合が高くなっていました。
④多くの薬物療法では副作用がみられていましたが、重篤なものはありませんでした。
⑤一つの試験では抗うつ薬による希死念慮の悪化をみとめていましたが、統計的な有意差はありませんでした。
⑥ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や三環系抗うつ薬の有効性は明らかではありませんでした。
一時は特に若い世代へのSSRI等の抗うつ薬の投与が希死念慮の悪化・行動化との関連で警戒されていましたが、現在では概ね有益性が上回るとの意見が多く、一般的な実践に含まれている状況と言えます。
かえって、有益な治療選択を回避することのデメリットの方が大きいとも言われており、(ご本人や親御さんの印象や意見はもちろん大切だとは思いますが)「子どもに薬は危険」というイメージのみではなく根拠に則った冷静な判断が必要と考えられます。